茎わかめコラム

ワカメは食物繊維の宝庫 毎日の健康に不可欠な栄養素のひとつです(後編)

2018.01.24

前編( ワカメは食物繊維の宝庫 毎日の健康に不可欠な栄養素のひとつです(前編))では、ワカメに多く含まれる「食物繊維」とはどんな栄養素なのか、私たちの体のためにどんな働きをしてくれるのか紹介しました。

そこで後編では、ワカメに含まれる「食物繊維」の種類と働きについて、さらに詳しく見てみましょう。

◆ワカメの食物繊維には「水溶性」と「不溶性」がある

食物繊維とひと言で言っても、大きく「水溶性」と「不溶性」の2つに分けられます。

水溶性とは文字通り水に溶ける性質があり、ワカメに含まれる水溶性食物繊維の代表には「アルギン酸」や「フコイダン」があげられます。一方、不溶性は水に溶けない食物繊維で、代表例として「セルロース」があります。

これら水溶性と不溶性の両方の食物繊維を含んでいることが、ワカメの食物繊維が「量」だけでなく「質」にも注目されている大きな理由のひとつなのです。では、水溶性と不溶性の食物繊維の違いとは何でしょう?

◆水溶性食物繊維「アルギン酸」の働き

乾燥ワカメで約30%含まれている「アルギン酸」は、摂取した際に体内の塩分を排出する働きがあるため、血圧の上昇を抑えてくれます。味噌汁の具にワカメなどの海藻を入れるのは、味噌の塩分による体への負担を少なくする日本人の知恵と言ってもよいでしょう。

また「アルギン酸」には、血液中のコレステロールを減らす働きもあると言われています。コレステロールが多くなりすぎると血管の中で固まり、血栓症や動脈硬化などの病気を引き起こす原因になりますが、「アルギン酸」は血液中のコレステロールを包み込み、そのまま体の外へ送り出すことによって、腸でのコレステロールの吸収を防ぎ血液中のコレステロールを下げてくれます。

◆不溶性食物繊維「セルロース」の働き

乾燥ワカメに8%ほど含まれている「セルロース」は、腸の中で水を含むと数倍から十数倍にふくらみ、腸の中でできる便の量を増やしてそのまま便として排出されるため、便秘の解消につながります。まさに、便秘予防のために働いてくれる「腸のお掃除係」というわけですね。

さらに「セルロース」は腸の壁を刺激して、腸のぜん動運動を活発にし、便が腸の中に長く留まることを防いでくれます。便が腸を通過する時間が短いということは、便の中の有害物質が吸収されることをなるべく防いでくれることになり、私たちの体を正常に保つために大切な仕事をしているのです。

いかがですか。ワカメに含まれる食物繊維は、体の中で一生懸命私たちの健康のために働いてくれているのですね。おやつやおつまみとして美味しく食べられる「茎わかめ」で、働き者の食物繊維を手軽に摂ってみませんか。

 【参考文献】■「わかめ・ひじき〜食物繊維とミネラルで成人病にさよなら」 辻啓介監修 ■「ワカメが高血圧も成人病もハネ返す」 西澤一俊著  ■ 辻 啓介ら 1968. 栄養学雑誌、26(3):113-122. ■ 久田 孝 1997.日本食品科学工業会誌,44(3):226-229
 

荒木葉子准教授 (新渡戸文化短期大学 准教授/食物栄養学科食品学研究室)

海洋資源の有効利用の観点から、まだ私たちの食卓に供されていない海藻の食品としての利用を試みている。未利用海藻を料理に応用するだけでなく、様々な形態への加工、風味などに影響を及ぼす海藻のエキス成分に関する実験やアルギン酸のカプセル料理への応用について試作検討中。平成22年から東京ガス(株)との共同研究により、エコ・クッキングに関する研究にも取り組んでいる。